『おふろやさん』西村繁男作 福音館書店
東京に来て好きになったのは、おふろやさんと坂道と商店街。
たて込んだ家々と寄り添った電信柱たち。
軒下にひしめく健気な植物の鉢。
色んな人が、いっぱい生きてるなぁ、
と思いながら路地裏を歩くのが好きでした。
さて、今回は『おふろやさん』。
あっちゃんがお父さんとお母さんと赤ちゃんと銭湯へ行く。
ただそれだけの絵本なのですが、絵だけで語られた
1ページ1ページからは、たくさんのおしゃべりが
聞こえてきます。
お母さんに抱かれた赤ちゃん。はしゃぎすぎた子どもらを
しかるおじいちゃん。刺青の入ったお兄さん。
脱衣所で談話する、常連客らしきおばあちゃんたち。
西村繁男さんの隅々まで楽しい絵は、いつまでも
見飽きることがありません。
色んな人が、生きてる。
それが、東京のいちばんの魅力だと思います。
風呂なし物件が激減して、経営的には難しいと思われる
銭湯ですが、ぜひ残したい町の風景です。
さあタオルを持って、おふろやさんへ!
〔セットでおすすめ〕
『すっぽんぽんのすけ』
『すっぽんぽんのすけ せんとうへいくのまき』
もとしたいづみ作、荒井良二絵、すずき出版