『かばくん』
岸田衿子作、中谷千代子絵、福音館書店
「202号室にあさがきた おはようまるちゃん」
「飲むなら飲むと言ってくれ(おっぱい)」
『かばくん』のパロディから、私の息子への語りかけは始まった。
本を開く余裕すらない、おっぱいおむつと格闘の日々に。
心をきゅっと掴まれるような愛情深い言葉が、
この絵本にはさりげなく、過不足なく並んでいる。
かばの親子を訪ねる少年と亀の子。
動物園での一日がのびやかに描かれた絵本だ。
登場人(かば?)物の距離感が程よく、風通しの良いのも
『かばくん』の魅力のひとつ。
かばくんが中心軸ではあるものの、出てくるみんなが
独立して、それぞれの足で立っている感じがする。
それらをゆるく束ねているのが、
優しいのに存在感と心地良さのある中谷さんの絵と、
卓越した岸田さんの言葉のセンスだ。
友人が子どもの頃、あまりにこの本が好きで、
そっくり写し取ったという気持ち、わかる気がするなぁ。
刊行から40年経った今も鮮やかで、しかも
他の絵本を押すことなく飄々と輝き続けている。
産後しばらくはこのコーナーを休もうかと思っていたのに、
5月の風の中自転車をこいでいたら、おっぱいのように
言葉たちがあふれてきた。
こぼれ出るものを、少し、整える。
おっぱいも、言葉みたいにコントロールできたらいいのに。
セットでオススメ『かばくんのふね』同作者、福音館書店
*新米母のため息とともに、また絵本を紹介してゆきます。
更新は少しペースダウンして3で割れる月…3、6、9、12月です。
どうぞお楽しみに。