『ねこのかぞえうた』 せなけいこ すずき出版
1歳を目前にした頃から、急激に絵本への興味を増した息子。
実は、あげてもあげても欲しがるご飯の代わりに
絵本を出してみたのがきっかけだった。
ごちそうさまになると泣き出す彼を椅子からさっと降ろし、
絵本を読み始めるとにっこり(よしよし)。
『くだもの』(平山和子、福音館書店)では、
馴染みのあるみかんの所で手を伸ばしてきた。
「さぁどうぞ」という言葉に嬉しそう。
文は2文節くらいのものを喜ぶので、
絵には反応するけど文の長い『ふきまんぶく』(田島征三、偕成社)などは、はしょって読んだりしている。
力強いタッチが好きみたい。
なんでもびりびりに破ったり、なめてべちょべちょにする時期は、
ボール紙でできた絵本
(『ごぶごぶごぼごぼ』をはじめとする福音館の012シリーズ、ブルーナやこぐまちゃんの赤ちゃん絵本など)をもてあそんでいたが、避難していたふつうの絵本たちがやっとカムバック。
中でもお気に入りは、4ヶ月頃にもじっと耳を傾けていた『ねこのかぞえうた』。
せなけいこさんのちぎり絵は、温か味がありながら、長い間により洗練され、シンプルな安定感がある。
1匹ずつ増えてゆくねこの、それぞれのキャラクターを味わいながら、節回しをつけて韻を踏んだうたを歌う。
最後に10匹がそろって夕日の中を駆けてゆくシルエットは心地よい余韻を残す。
が、終わるとすぐに表紙へとひっくり返し、「ん!(もう一度!)」と差し出す息子。
エンドレスの要求を半分断りながら1日10回ずつ(私、夫)は読んでいる毎日。
とっくに見なくても歌えるようになってしまった。
残念ながら絶版の状態だが、テンポと全体のバランスがとても良い一冊で
表紙の配色がとくにすてき。
すずき出版は、他にも気取らない、日常に溶け込む絵本をたくさん出しており、
図書館勤務時代おはなし会の強い味方だった。
さて、3年にわたって紹介させていただいたオススメ絵本の連載は、
これにて最終回となります。
6月から北海道・大沼へ移り住むことになり、世界一小さな絵本屋「ねこひ」も
しばらくお休みです。(「三月の羊」は焼き菓子の通販を続けます)
これまで読んでくださったみなさまと、
執筆に声をかけてくださったyukiさんに、心から感謝を申し上げます。
またどこかで、お会いしましょう。
みなさま良い春を!